共に手を動かし、考え、実験観察の取り組みを育てる
〜教員実験研修会「KOBE金曜EveLabo」の6年間から〜
本サイトの元になっている教員研修会の活動を報告する機会をいただきました。
「実験観察の勘どころ」の趣旨に合うように、いくつかの実験観察をピックアップして紹介しながら、取り組み手法を伝える構成にしています。
取り上げた項目
・紅葉の観察と色素抽出
・根粒菌と菌根菌の観察
・学習曲線を描こう
・免疫カードゲーム「Immuno!」
「生物の科学 遺伝」2022年3月発行号 Vol.76-2
に、掲載されました。
別刷り(PDF)は、本サイトの「お問い合わせ」メールフォームからご連絡ください。お送りします。
よく知られている、「半切り種子」を用いて穀類種子の発芽におけるアミラーゼ合成の誘導と胚のはたらきを確かめる実験。これを、オブラートを使っておこないます。準備が簡単な上に、実験結果が紙になるところが面白い。
さらに、主食である米、つまり、イネの種子で一連の実験に取り組めるように、検討した条件や関連の実験も紹介しています。
特に、加藤俊一氏による「米粒プレパラートの観察」は秀逸な観察実験です。
改めてその方法も紹介しています。
科学誌「生物の科学 遺伝」2022年1月発行号 Vol.76-1
に、掲載されました。
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2021年日本生物教育会全国大会で口頭発表。
発表動画はこちら
発表要旨はこちら
これはもう、材料との幸せな出会い。一袋100円程度。年間を通じてスーパーで簡単に手に入る。茎も根も同時に観察できる。スプラウトの中では大型で作業がしやすい。
根では根冠のコルメラ細胞、茎では内皮細胞が平衡細胞としてはたらき、いずれもデンプンを含んだアミロプラストの沈降によって重力を感受しています。ちょっとした工夫をして上手く断面を出せば、ヨウ素液で染まったアミロプラストを観察できます。
実施方法と実践内容を (株)エヌ・ティー・エス
・科学誌「生物の科学 遺伝」2020年9月発行号 Vol.74-5
・「実践 生物実験ガイドブック」(「遺伝」別冊No.24) 2020年9月発行
に、紹介しています。
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2017年に兵庫県立須磨東高等学校で、2018年に市立伊丹高等学校で生物選択者対象に授業で実施しました。2018年日本生物教育会全国大会で口頭発表。
発表スライドはこちら
発表要旨はこちら
実験プリント(概要)はこちら
須磨東高校では、重力に対する応答の例として、キュウリの芽生えの「ペグ」も観察しました。
キュウリの芽生えのペグの観察
口腔内、奥歯の歯肉周辺をぬぐってスライドガラスに乗せて観察すると、扁平な上皮細胞や口内細菌とともに、前線に出て活動する白血球を観察できます。さらに、墨汁などの異物を塗布したスライドガラスを用いると、アメーバ運動や貪食といった白血球の活発な活動を引き出すことが可能です。
採血も不要で、生徒用の顕微鏡でも簡易に観察できる、活動するヒトの好中球。血液中の細胞というイメージから、まさに「はたらく細胞」へと印象が変わる、免疫の導入に適した観察です。
実践は兵庫県立須磨東高等学校、伊丹市立伊丹高等学校、兵庫県立明石高等学校の生物基礎で行いました。なお、感染予防のため、自分自身の試料を観察し、手洗いを確実に行う必要があります。
実践内容と方法を、(株)エヌ・ティー・エス
・科学誌「生物の科学 遺伝」2020年11月発行号 「実験観察の勘どころ」
・「実践 生物実験ガイドブック」(「遺伝」別冊No.24) 2020年9月発行
で紹介しています。
別刷り(PDF)は、本サイトの「お問い合わせ」メールフォームからご連絡ください。お送りします。
実践報告(2016) 教員研修記事(2016)
観察例の動画はlabopolka_bioの再生リスト「歯肉周辺の好中球」で公開しています。
この取り組みは北九州工業高等専門学校の牧野伸一准教授の発案で、牧野先生の実践報告はこちらからご覧になれます。(外部リンク)
クラスで学ぶ利点を生かす生物基礎の授業実践 牧野 伸一 北九州工業高等専門学校研究報告 52 59-64 (2019)
ゲームは「UNO」に似て分かりやすく、生物基礎の内容で取り組めます。ルールそのものが免疫反応をたどるしくみになっていて、仲間と共にプレイするうちに自然と頭に入ってきます。さらに、自分だけが上がろうとしても上手くいかず、個人戦なのにゲーム展開はチームで作る、まさに、免疫反応が多くの細胞の連携プレーで成り立つことを実感できます。
今回、カードの作成にあたり、京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の河本宏教授の許諾を得て、河本教授の免疫細胞キャラのイラストを使わせていただけました。教員間で実際にプレイして意見交換し、授業での状況も検討して、50分授業に合わせた改変ルールも作成しました。さらに、進行を助けるアイテムとしてテーブルシートを作成しました(2019年)。 2023年末で全国300名を越える先生方にカードをお送りし、ご活用いただいています。
実践報告(2023版) 教員研修の記事1 記事2 カード写真
改変ルール表やカード原稿はWeb上で配布できませんので、ご希望の方は本サイト「お問い合わせ」メールフォームよりご連絡ください。
「裏返しで上下逆に四字熟語を書く」課題を使って展開します。
「試行錯誤学習の体験と学習曲線」の実験として、旧来、「迷路」や「鏡の中を見ながらなぞり書き」などの課題が紹介されてきました。ただ、近年の高校「生物」では「学習」に関しては、あまり心理学的な背景のある内容には踏み込まず、神経細胞の活動とのつながりで説明できることを中心に扱うように変わってきています。そこで、逆に、私たちヒトが「試行錯誤」的な学習を進める中で「メタ認知」の活動を行い、洞察学習へと結びつけていることへの「気づき」に着目してみました。
「メタ認知」は新しい指導要領の解説(小中高すべて)に言及があります。生物の授業のほか、HRや教員研修の場などでも取り組んで考えることができる題材です。
概要と課題の説明スライド
課題内容と考察設問例 資料
教員研修での取り組み 記事1 記事2
これまでに、兵庫県立北須磨高等学校、兵庫県立須磨東高等学校、兵庫県立伊丹高等学校で授業実践を行いました。
「迷路」を用いて「試行錯誤学習」の要素を上手く抽出できる実験例として、「小窓で迷路」があります。掲載されていた秀文堂の実験書は絶版です。
こちらについて具体的な実験方法や手順などの例をご希望の方は、本サイト「お問い合わせ」メールフォームよりご連絡ください。
教室での授業ならガラスビーズ顕微鏡でもチョチョっと作って、レーウェンフック気分になるわけですが、プリント学習やオンライン授業ではそうも行かず。でも、あきらめません!というわけで、なーんにもなくても、すぐにできる、スマホ顕微鏡のレシピです。今なら、マスクの繊維チェックがトレンドでしょうか。こういう提案で、生徒との間につながっている感が持てたら、ステキです。
Stay Home! でも すぐできる スマホ顕微鏡 基本のビーズ顕微鏡・スマホ顕微鏡
豆苗は1年を通じて安価に簡単に手に入る材料です。
豆苗を用いて重力屈性とアミロプラストの観察をする実験を提案しています。(リンクをご覧ください)
今回は、豆苗を用いて、エンドウの茎頂分裂組織を観察しました。切り出しの作業が少し細かいですが、取り出しさえすれば、あとは簡便です。
生徒全員でするのはムリでも、根端分裂組織の観察を生徒実験として実施するときに、先生がちょっとやってみて、実物に触れ、結果を生徒に見せるだけでも価値ありです。
根端分裂組織の観察にも優れた、時短&確実な解離・染色方法の紹介もしています。
実験方法ははこちら
写真1(茎頂)
写真2(分裂組織)
学習している個別のことがらが、生徒たちの頭の中でなかなかつながりを作っていかない、という感じは多くの先生方が持ったことがあるのではないでしょうか。教科書の内容を進めていく授業の積み重ねの中では「学びを俯瞰する」機会を持つことがなかなかできません。「生物」の細胞と代謝の単元が終わったあたりで、いちど、生物基礎、生物(学習したところまで)をつなげる活動をすると、前半が重たい「生物」に意欲を持って取り組めるようになるのではないか、いま、何を学んで行っているのか、という「立ち位置」が少し見えた状態で、次の遺伝子の単元に進めるのではないか、という、期待を持って、代謝パスウェイデータベースを使った活動をしてみましょう。
Roche社の「Metabolic Pathways」 は、ポスターとデジタル版の両方が使えて、操作も簡単です。
デジタル版はこちら (Roche社のサイト)
※残念ながらポスターのPDFはダウンロードできなくなっています。(2021)
ポスター請求フォーム
活動はじめのガイドプリント
代謝マップ概要・使用方法
カテゴリ表示(日本語つき)
ミッションカードの例
教員研修での利用(2019)
兵庫県立伊丹高等学校での授業実践(2019)より生徒感想
ろ紙リングを使ったニワトリ初期胚の観察方法を、卵が小さいウズラに応用しました。鳥類胚は脊椎動物のからだづくりの過程を観察するのに大変適した材料です。
ニワトリやウズラの胚を、観察することを通して学習できることは、多岐にわたります。実践の具体例は本サイト「過去の学校実践の記録」をご覧ください。
ウズラ胚を用いた実践内容と方法を、(株)エヌ・ティー・エス
・科学誌「生物の科学 遺伝」2018年11月発行号 「実験観察の勘どころ」
・「実践 生物実験ガイドブック」(「遺伝」別冊No.24) 2020年9月発行
で紹介しています。
別刷り(PDF)は、本サイトの「お問い合わせ」メールフォームからご連絡ください。お送りします。
教科書(例:数研出版)の巻末にあるようなヌクレオチドのパーツから作るDNAの紙模型では、パーツ作りまでを先に期間を区切って個人作業とし、教室の掲示板に封筒を4つ貼って塩基ごとに回収します。質の悪いパーツははじいて、実習当日は、トレイにガサッと入れて出し「AとGをそれぞれが奇数、合わせて16個(12個でもよい)になるように取りなさい。」から始めます。また、写真の模型は、11塩基対で、A4用紙1枚のクラフト型紙をから短時間で完成できます。
あらかじめ、この型紙に入れる塩基数など「教材そのもの」や、塩基の取り方、塩基配列の読み取り方といった「ルール」に、見いだすための仕掛けを仕込んでおくことで、作ったあとの「使う活動」が充実し、授業を前に進めるペーパークラフトになります。
報告「見いだす体験を組み込もう」(生物部会誌2019)
概要1 概要2 A4型紙使用のプリント
写真の模型は「使える!生物の教材・実験with CD-ROM」広島県高等学校教育研究会理科部会生物部教材生物・教具研究会編2003 に掲載の型紙を改変して使用しています。型紙については本サイト「お問い合わせ」メールフォームからご連絡ください。
3年生にははなむけにDNAクラフトも。同じことの繰り返しですぐに編めます。エスコード HEMP 中ひも(カナガワ(株)) を使用しています。
編み方はこちら
手つなぎや定規を落としで、刺激の受容から反応までに要した時間を求める、古くから中学校でも行われてきた実験を、高等学校でのアクティブな活動に発展させています。
入力の位置や刺激の種類を変えて試行し、刺激の受容→感覚神経→脳での情報処理→運動神経→反応 という流れを構成する要素に着目して分析していきます。
楽しく実施でき、やっていることが見えやすい実験だからこそ、データの取り方、集め方、処理のしかた、いろいろな角度からデータを見ること、ノイズのありかに気づくこと、など、科学の体験を入れた活動に展開しやすいと感じます。
繰り返す試行について「学習」の影響が偏らないように手順を工夫しています。さらに、「手を握る(つなぐ)」という伝え方に含まれる別の要素(ヒトのコミュニケーションツールとしての手)にも気づく仕掛けを入れています。
定規は保健体育科から譲り受けた古い巻き尺を、ホームセンターで買える樹脂製の平板(幅2cm 長さ100cm 2mm厚)に貼り付けて作製。ケガをしにくく、丈夫で、長くて掴み損ねの少ない定規です。
この実習は北須磨高校、須磨東高校で修正しながら実施してきた方法に、三重県立松阪商業高等学校 川口 実先生の実践内容(2018年日本生物教育会
全国大会 口頭発表)を取り入れてアレンジしました。
2018年12月 市立伊丹高校 3年生 2019年1月 県立伊丹高校 1年生 で実施しました。
実験手順 考察用プリント例@A データの例
市立伊丹高等学校で2018年4月 3年文系の生物初回授業で行いました。2018年日本生物教育会全国大会で口頭発表。
「こんなことになるまでにイモには何が起こっただろう。
イモの中で起こらなければならないことは何だろう。」
どんどんA4紙に書く。1枚1文。誰かの発言に対して入れていい合いの手は「なんで?」「どうやって?」。違うと思ったら突っ込んでいい。…こういう活動のカギはどんなルールで進めるかです。…なんで?どうやって?って、えええ??わからん!!どこかで必ず行き詰まる。
書いた紙を起こったであろう順に並べる。ほかの班に説明する。「気づき」と「行き詰まり=学ぶべき課題」を共有する。この単元で着目したい要素は、芽を出したイモでも、開花した花とつぼみでも、同じように生徒たちの中からちゃんと出てくる。え!?ウチら結構イケてた?「刺激の感受」「シグナル形成」「シグナル伝達」「応答」そしてその「タイミング」…観察に基づいた気づきに、同じポイントが含まれている。その後の授業の中で、何度も、その気づきの場面を例に出してわかり合える。
さらに、自分の言ったことが次々と「なんで?」「どうやって??」の問いになる。「なんで?」「どうやって?」に行き詰まったから、それが興味と学びの原動力になる。学びの課題を持つための導入。
初対面の彼らと、楽しくわいわいと、その後につながる活動になりました。
発表スライドはこちら
発表要旨はこちら
ご生物基礎では体内環境の単元に入るとまず、体液について学習します。この単元、できるだけ、実物を見せるようにしています。そのひとつが、ブタ血液の利用。
実験室ではなく、教室に持ち込んで授業を進めながら、実物で確認していくスタイルを紹介します。
動脈血・静脈血の色の観察、血しょう・血餅の観察、尿糖検査用試験紙を使った血糖の確認、血液凝固の観察、などを普通教室でやっています。
写真は久々にギムザ染色してみたブタの血球。
準備と実験手順のまとめ(2018)
教員研修会スライド抜粋
冷凍保存について(2016)
実践報告(2014)
血球写真
※いずれも学校名は当時のものです
ご存じ、横紋筋の筋繊維です。材料は何でしょう?
実は、コンビーフ。湯の中でほぐしてオルセインで染めて水で封じただけ。簡単にきれいに見えて面白い。
横紋筋の観察は一番手軽な材料としては缶詰のツナをちょこっと酢酸オルセインで染めるか、ナマでやりたいときは鶏の手羽先を使っていました。
ラボに来てくれた中学生といっしょに観察。カツオけずり節も、豚ミンチも、冷凍むきエビも、横紋バッチリできれいでした。味も歯触りも、生きものの仲間分けも違うのに、筋肉のつくりは共通。からだの大きさがずいぶん違うのに、筋繊維の太さや横紋の間隔は大差ない。加熱してもつくりが残っている。楽しい、おもしろい観察でした。 実験手順はこちら。
手かずが多くなるので、北須磨高校にいた頃(十数年前)は、2年生でオルセイン染色で観察、唾腺とは何者?どれを取ればいいのか分かったあとの3年生で、メチルグリーン・ピロニン染色液を使って、と、2回やっていました。それで各回50分の授業時間に収まったのです。
どちらの染色液を使うときも、私は前処理に乳酸を使います。今回、メチルグリーン・ピロニン染色の前処理に定番の塩酸を使ってみましたが、乳酸の方がよく広がる気がします。(私は、そう感じています。)写真は乳酸処理。
オルセイン染色の実験手順(乳酸使用)
写真(生徒作製標本)
メチルグリーン・ピロニン染色の実験手順(乳酸使用)
兵庫県高等学校教育研究会 生物部会誌 vol.43(2019)
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